デジタルカメラ活用術

デジタルカメラとクローズアップレンズ

このレポートはメルマガに配信した物を再編集してお送りします


これまでデジタルカメラに取り付けると効果を発揮する光学フィルター類に付いて述べてきました。今回紹介するのはクローズアップレンズ、もしくはマクロコンバーターと呼ばれている物でフィルターとはちょっと指向の異なる光学系です。

クローズアップレンズは光学フィルター類と同じ様な形をしており、カメラのレンズ前にネジ込んで取り付け使います。フィルターと異なるのはクローズアップレンズはその名が示す通り「物を大きく撮る」レンズであると言う事。
物を大きく撮る方法にはいくつかあって、1つには望遠レンズがあげられます。望遠レンズは遠くの物や風景を近くにたぐりよせ、あたかも接近して撮った様に見せる事の出来るレンズです。
もう1つの方法がクローズアップレンズ。この場合はカメラ自体を被写体に可能な限り近づいて撮影を可能にするレンズです。
2つの違いをもう少し説明すると、カメラを固定して光学レンズによって物を大きく撮るのが「望遠レンズ」で、カメラを持って移動し近づくのがクローズアップレンズ。


カメラ用のクローズアップレンズ
望遠レンズを使ったマクロ撮影では、主に動きの早い昆虫や鳥の様な動物に対して気が付かれないように一定の距離を置いて撮影する場合に用いられます。但しデメリットとして最も倍率を上げて撮影しても劇的な接近写真を撮れる訳ではないと言う事です。
反対にクローズアップレンズを使った場合、レンズ倍率を高くして行くと例えば昆虫の顔、更には目玉の複眼の1つ1つにまではっきり撮影する事が可能になります。
デメリットは望遠レンズと違いカメラを被写体に接近させねばならず、手の届かない場所にある被写体には無理で、また警戒心の強い動物・昆虫の撮影には細心の注意が必要になります。

クローズアップレンズを使ったマクロ撮影を一度体験してしまった私はそれ以来ずっとマクロの世界を追いつづけています。それだけ引きつける何かを持った撮影述で、また奥が深くとても楽しいのでここではそのクローズアップレンズを使った撮影方法を色々と述べていこうと思っています。
なお「奥が深い」だけあって一度や二度では語り尽くせません。なのでシリーズ化してメールマガジンに書いていきます。

〜 クローズアップレンズとは? 〜


クローズアップレンズ、それは虫眼鏡と同じ物。お年寄りが使うルーペも同じです。人間の目では見る事が難しい小さな小さな物や文字もルーペを使えば拡大して見る事が出来ます。これと同じ事をカメラでやるのです。
カメラのレンズの前にクローズアップレンズを取り付けファインダーで覗くと被写体にどんどん近づいてピントを合わす事が出来ます。更にもう1枚クローズアップレンズを取り付ければもっと被写体を大きく、つまりは細部をクローズアップして捕らえる事が出来るようになります。
もしも手元に虫眼鏡やルーペがあったならば、デジタルカメラのレンズの前に密着してみてください。そしてデジタルカメラのスイッチを入れ、液晶画面を見てみてください。ほら!これまで撮れなかったような小さな物を捕らえる事が出来るでしょ!

このマクロ撮影はデジタルカメラだからこそこんなに簡単に出来るのです。と言うのも、本来マクロ撮影をする時は一眼レフカメラを使ってレンズの捕らえた被写体を自分の目で確認しながらピントを合わせ、構図を決める必要があるからです。

スナップ写真を撮るようなコンパクトカメラではカメラのレンズと人間の目で見るファインダーが別々に取り付けられており、カメラ用語で「パララックス」と呼ぶ「視差」が生じてしまいます。
これは自分の目で見ている被写体とカメラのレンズ部が見ている(つまりはフィルムが見ている)被写体とが数センチずれる為、思った様に構図が決まらないのです。
このパララックスは人物撮影や風景撮影ではまったく問題になりませんが、被写体に数十センチより手前に近づくと顕著に現れる現象です。

更にマクロ撮影ではフォーカス(ピント)合わせが重要です。普通、人物を撮ったときは少しぐらいピントが合ってなくてもまったく見た目には分からず、それを利用してコンパクトカメラや使い捨てカメラでは難しく言うとカメラの絞りを絞ってどこにでもピントが合っているかの様なパンフォーカスにしてしまっています。
ところがマクロ撮影では「パンフォーカスだから大丈夫」と思ってどこにでもピントが合うと思ったら大間違い!

QV10Aに小型ルーペを装着


被写体に数センチまで近寄れる
更にマクロ撮影ではフォーカス(ピント)合わせが重要です。普通、人物を撮ったときは少しぐらいピントが合ってなくてもまったく見た目には分からず、それを利用してコンパクトカメラや使い捨てカメラでは難しく言うとカメラの絞りを絞ってどこにでもピントが合っているかの様なパンフォーカスにしてしまっています。
ところがマクロ撮影では「パンフォーカスだから大丈夫」と思ってどこにでもピントが合うと思ったら大間違い!
カメラを固定した際にピントが合っている範囲を「合焦点域」と言いますが、合焦する範囲は倍率の低いマクロレンズで数センチ、高倍率になると数ミリになってしまっています。
なので合焦範囲をほんの少しでも外れてしまうと急激に完全にぼけてしまうのです。
この事から、マクロ撮影では一眼レフカメラが必需品になっていた訳なのですが、実はデジタルカメラは液晶モニターが付いているほとんどの機種が一種の一眼レフと同じ様な働きをしてくれます。
これはデジタルカメラのレンズを通してCCD(受光素子)が捕らえた画像を電気的に分解し、カメラ背面に装備されている液晶モニター(画面)にリアルタイムで写し出してくれる為です。中には撮影時に液晶が使えず、撮影した後の確認用のみの仕様のデジタルカメラもありますが、それ以外のカメラでは一眼レフ的使い方が可能になります。


C1400Lとルーペを使っての
簡易マクロ撮影も可能
私がはじめてマクロ撮影でクローズアップレンズを使ったのは、カシオのQV−10Aにルーペを取り付けた時でした。
そう、ルーペがクローズアップレンズの代わりです。それまで10センチ程度までしか近づけなかったものが、レンズ前数センチに接近する事が可能になり、丁度その頃生態を研究していた「テントウムシ」の観察用に利用したのです。
QV−10Aは解像度が低かったので、マクロ撮影によるピンポイントのみ拡大して撮影する方法は解像度の低さを隠す意味でも威力を発揮しました。
余談ですがマクロに強いデジタルカメラの代表としてリコーのDC−2、DC−3シリーズが有名です。
これらカメラはレンズ前(正確にはレンズバリア前)1センチにまで寄って撮影する事が可能でした。しかもオートフォーカス(マニュアルフォーカスも可能)がマクロにも対応しており、ピシッと合うフォーカスが実にキレの良い画像(写真)として撮影出来るのです。
当時の他社のデジタルカメラと比較しても最も良く出来たカメラでした。その後DC−2の生産終了の際は中古市場でも人気が出て、プレミアが付くような時もあったようです。

この1センチまで寄れるDC−2にルーペを取り付けて撮影したらどうなると思います?
私の考えでは被写体をもっと大きく、つまりは更なるマクロ撮影が可能ではないかと思いました。皆さんの想像するところはどうでしょうか?

そこて実験、5円硬貨を用意してどんな風に撮れるかやってみた結果は、、、なんと!
ルーペを取り付けても更なるマクロ撮影になるわけでもなく、むしろレンズと被写体(5円玉)の間にルーペが挟まった分だけ接近出来ずにルーペを使わない時よりも悪くなってしまいました。
この事からルーペはどのデジタルカメラにも使える訳では無い事が分かりましたが、DC−2、DC−3以外のカメラであれば劇的な「マクロ撮影」は可能になります。


今回はこの辺にしておきます。
なお、ルーペとカメラ用のクローズアップレンズとは同じ物ですが、その違いは精度の良し悪しです。本格的に撮るにはクローズアップレンズを用意してデジタルカメラに装着する必要が有ります。その点についても次回をお楽しみください。

マクロ撮影に使う道具達



カメラ屋で売られている10倍率のルーペ


ルーペを使うと簡単にマクロ撮影が可能


99/02/20
デジタルカメラ大実験へ