デジタルカメラ豆知識


「デジタル写真と銀塩写真の違い」


ここに書いたものはメルマガ「デジタルカメラ研究ネットワーク」に掲載したものを再編集してアップしました




私に届くメールやアンケートのコメントで一番多いのが
「デジカメの購入を考えていますが、どの機種が良いのですか?」

この質問が一番頭を悩まします。
先日デジタルカメラの機種について調べたところ、現在市場に出ているデジカメ
の種類は実に60機種を超えています。これ、異常だと思いませんか?
この中にはすでに生産終了された35万画素のデジタルカメラも含まれてはいま
すが、生産は終わっても在庫があるので市場で買えるカメラに違いはありません。
特にデジタルカメラの場合は製品周期が早いので、マイナーチェンジと新型が
バシバシと市場に出現しています。
この中から「これが一番」「この機種がいいよ」なんてとても言えるものではあ
りませんし、また安易に言えないのが現状です。つまり、良いデジタルカメラは
あっても、その人にとって良いのかどうかは分からないのです。

私はオリンパスのC1400Lって言う今売られているC1400XLの前代で
130万画素のデジタルカメラを昨年はずっと使っていました。購入した当時は
パーソナル機としては最高の画素数を保持した優秀なカメラです。私も大変満足
して使っており、今でも特に気にいっています。
ところがここ最近の200万画素オーバーに追いやられ、130万画素クラスは
ランク的に2番目以下になってしまいました。更に最近130万画素を手に入れ
られた方の中には思った程の解像度が得られてないと失望されている方もいるよ
うです。
私は満足していた130万画素が人によっては全然考えているよりも悪かったっ
て事です。こう言う「個人差」が大きいデジタルカメラに対して私が「これがい
いから買いなさい」なんて発言したらそれこそ大変な事態になってしまいます。

この「個人差」とは何なのか?
その答えは撮った画像のそれぞれの使い道によるものです。
130万画素のデジタルカメラで撮った画像をデータとして「デジタル」で処理
している分には問題が無いレベルだったとしても、これを印刷物と言う媒体(カ
ラープリンターによるプリントアウトも含む)つまりはアナログ的に利用しよう
とするとなるとこれは確かに解像度不足に陥ります。特に高解像度のプリントシ
ステム(最終的には誌面へのカラー印刷)では顕著に現れてしまいます。
解像度(画素数)と印刷サイズとは密接な関係があるので後ほど話しますが、
例えばA4サイズなら最低でも600万画素程度にまでなれば銀塩並のクオリ
ティーになって来ます。



    
    
    
    
    
    

キヤノン EOS D6000
600万画素CCDを搭載したプロ用デジタルカメラの最上位機で、メーカー希望小売価格(税別)3,600,000円。本当の銀塩レベルを求めるならこのカメラのレベルまで欲しいところだ。



とは言え技術的には可能であっても(すでにプロ用に360万円で売られていま
す)600万も画素数があったらパーソナルなコンピューターで処理する能力を
考えると600万画素は辛いですね。
600万画素は解像度で言うと3000x2000ピクセルです。どんなにパソ
コンが進化しようが、3000x2000ピクセルの大画面を一度に表示する巨
大ブラウン管が家庭の中に登場するとは考えにくいです。もちろん扱えないサイ
ズではないですが、レタッチする人にとってはたった1枚の画像なのに、この広
大な面積をレタッチすると言うことはほとんど「プロ」の世界で、1枚仕上げて
お金がもらえる商売や芸術家の作品づくり以外でマトモに立ち向かう人がはたし
てどれだけいるのだろうか?
特にデジタルカメラの場合は無数に撮影した上で、後からパソコンのモニターで
ピントの確認をするようなもんですから画像の展開とパソコンとは切っても切れ
ない関係になっています。それにも増して1つ15MB以上にもなる画像データ
サイズを保存するメディアの革命が起こらないといけません。
つまり、デジタルカメラに技術の限界か無くても、パーソナルな観点で言えば限
界は存在します。それを考えると、パーソナルなデジタルカメラで銀塩と同じ写
真クオリティーが欲しいなんては言えなくなってしまいます。ある程度での妥協
点が必要になってくるのです。本当に欲しいとなるとこの先、プロ用の編集設備
と体力をそろえてからでないと話にならなくなります。

と言うことで銀塩同等のクオリティーを求めるのであれば130万画素なんて下
の方のレベルにしかなりません。200万画素にしてもまだまだ全然足りないの
です。この解像度で銀塩レベルを求めるほうが間違っていると言っても良いでし
ょう。


ところが過剰な宣伝PRも合間って、デジタルカメラは銀塩フィルムと同じレベ
ルになったと最近言っています。フォローしておきますが、これは決して間違い
ではありません。レンズ性能は安い銀塩カメラなんかより遥かに良く、高級一眼
レフ並の物を搭載するデジタルカメラもありますし、少々ピントの甘い銀塩写真
となら肩を並べるかそれ以上の性能には事実デジタルカメラはなってきました。

しかしここに誤解が生じてきます。この銀塩レベルと言うのは解像度に見合った
プリントサイズまでであって、そのサイズを超えて引き伸ばすと当然データ不足
に陥ります。
ここで誤解を受けたままデジタルカメラを購入してから解像度の低さに失望する
人が出てくるのは当然です。いくら200万画素に解像度が良くなったって触れ
込んでも、どう転んだって「デジタル」なんです。1600x1200の格子状
の点の集まりには変わり無いんですよ。
銀塩写真をルーペで覗くと分かりますが、アナログは格子状にはなりません。
粒子なのです。なのでどんなに引き伸ばしてもボケが大きくなるだけで、格子状
のジャギー(キザキザ)がプリントに現れる事は無いのです。


    
    
    
    
    
    

TIFF非圧縮モードで撮影した画像の一部
これを見ても分かるとおり、デジタルカメラは格子の集まりであって、拡大して見てみるとキザキザしているのです。200万画素のデジカメで撮影。



これがデジタルだったらどうか?
200万画素なら1600x1200の格子であって、引き伸ばせば伸ばすほど
格子が目に見えてきてしまいます。デジタルは人間の目の錯覚をうまく使った代
物であり、ある程度離れた距離で見たり、またプリントサイズが小さければ格子
はなだらかな線に見えるだけで、本来は拡大するとキザキザしているのです。
この事を甘く理解していると、200万画素なのに大きく引き伸ばしたら変にな
ったという事になってしまうのです。

例えば書籍や雑誌など印刷物の誌面に使われるクオリティーで、「デジタル」と
感じさせないのは600万画素でA4サイズです。ならば300万画素でA5、
150万画素だA6サイズ、だいたい葉書程度です。
150万画素のデジタルカメラで撮った物を葉書サイズより大きな物に引き伸ば
す場合は、どこかに無理がかかって来ます。反対に、葉書サイズにプリントする
ならば銀塩と同じレベルなので、もし思った画質になっていないのならば、それ
はプリンターがいけない場合が原因の1つです。古いプリンターや3色インキな
んて物ではとてもハイクオリティーには付いていけません。
もう1つ原因は同じ200万画素のCCDでも画像の圧縮方法や、疑似色を押さ
えるアルゴリズム、また光学レンズの違いによってすべてのデジタルカメラで違
った特性を持っているからです。私が使っている130万画素のC1400Lで
はCCDに2/3インチサイズの大きな物を採用しています。画質のバランス的
にも素晴らしく、疑似色の発生もかなり少なくなっていました。他の製品の中に
は赤い花を撮った際に緑の葉っぱと重なった境界線が黒く縁取られる現象が発生
するケースがあります。これは1つの画素の入った格子と格子をソフト的になだ
らかにしようと努力した際に現れる副産物で、本来不必要な物なのに結果として
現れてしまっています。特にシャープな切れ味を出すカメラに出やすく、メーカ
ーによっては光学レンズでわざと一段ボカス対策もしています。この辺の仕様は
銀塩とはまったく違うところですね。また、これもCCDの特性なのですが、暗
部にノイズが浮かんでしまい、真の黒が出ない場合もあります。


    
    
    
    
    

画像の拡大
この場合は黄色の花と背景の緑の境界線に黒い擬色が発生してしまっている。この様な特徴はデジカメ特有のものであって銀塩にはない。画素数が少ないデジカメでは特に目立ってきてしまう。



これらの問題を解決する最も手っ取り早い方法は高解像度の(画素数が多い)デ
ジタルカメラを手に入れると言う事です。

さて、これまで書いて来た内容は期待外れの画質にがっかりしたと言うハイクオ
リティーを求める人達へのアドバイスであって、解像度とのバランスでデジタル
の画質はこんな物だと思っている私なんかは、今の画質に十分満足しています。
この辺は誤解なさらないでくださいね。
何せ私は130万画素のデジカメで撮った物をA4サイズにカラープリントし部
屋中ペタペタ貼りまくって満足している私にとっては200万画素は感動モノ、
あり余る程の解像度だと喜ぶ人間であります。
音楽を聞くにしてもラジカセで十分と言う人もあれば本格的なスピーカーとアン
プで聞かないとダメと言う人もいるし、これは個人の差であって「デジタルフォ
ト」にも言えることです。

最後に私が130万画素のデジタルカメラで撮った昆虫の作品をノンレタッチで
誌面に載せた時の質感を書いておきますと、本当に満足行くクオリティーになっ
ていたのは名刺サイズまででした。それだけ書籍誌面への印刷レベルは高いもの
が要求されます。パソコンのプリンターとはまた別の世界です。


デジタル写真と銀塩写真はお互いの特性を生かして使い分けていくのが最善の策
であります。

    
    
    
    
    
    


99/07/11
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