デジタルカメラ豆知識


「マクロモード」


ここに書いたものはメルマガ「デジタルカメラ研究ネットワーク」に掲載したものを再編集してアップしました


【質問】……………………………………………………

現在デジカメの購入を考えていますが、その際趣味であるジュエリーができる限
りきれいに写るものがよいと考えております。先日友人のデジカメ(ソニー製の
サイバーショット)でダイヤモンド入りの指輪を撮影したところ、指輪以外の部
分はきれいに写るのですが、指輪の部分がピントが合わずボケてしまい指輪と判
別つかないくらいです。ピントを変えてみたり、手ぶれ防止のためにカメラを固
定して撮影したり、周りの照明を変えてみたりしましたがどうにも指輪が写って
くれません。この原因はソニー製のものだからなのか、それともデジカメではジ
ュエリーの撮影ができないのか、もしくは、私の撮影方法が間違っているのかわ
かりません。どなたかジュエリーの撮影方法または、ジュエリーの撮影できるデ
ジカメをご存知の方は教えてください。

    
    
    
    
    
    
    
    
    


【回答】……………………………………………………

今回は質問箱に寄せられたAさんの疑問を元にマクロモードとは何かまで深く展
開して説明していきます。

マクロとはそもそも何ぞや?
その昔、NHKの番組に「ミクロの世界」と言うのがあったような記憶が有りま
す。小さい頃だったかなあ、、ミジンコとかを写して私はそれを食い入るように
見てたと思います。ちょっと番組の内容はあやふやですが、「ミクロ」とは顕微
鏡で覗いた世界、小さな小さな世界です。
これとは対照的なのが「マクロ」。私は余り良く知らないんですが、同世代の奴
等が学生時代に「マクロス」なるアニメを好んで見てたのを思い出します。何だ
か人類に比べて大きな巨人が出て来て、彼らと宇宙戦争をするとか言った内容な
のかな?検索サイトで「マクロ」で調べると、マクロ撮影ってのはほとんどヒッ
トしないで「マクロス」ばっかり出てきます。
ま、それはさておき「マクロ」は大きな大きな世界です。

ちなみに「ミクロ」と書きましたが、英語読みでは「マイクロ」です。
「MICRO」はラテン語で「ミクロ」と読むのですが、日本語ではミクロでも
マイクロでもどちらでも意味は通用します。カメラ用語だと「マイクロスコープ」
や「マイクロレンズ」を使っていて、ミクロレンズとは言わないですね。
「マクロ」は「MACRO」の単語から来ています。意味は「巨大な」です。


デジカメに搭載されているのは「マクロモード」。この機能は通常よりも近くに
寄って被写体を撮影出来ますって言う機能です。近くに寄れるって事は、小さな
物も撮れるって事で、なんだか「マイクロモード」と呼んでもよさそうですが裏
を返せば「小さな物も大きく写せる」の意味、つまり「マクロ」な撮影モードな
のであります。よって「マクロモード」。
理屈っぽいですが、お分かりいただけたでしょうか?

ところで「焦点距離」と言う言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。少々
難しい話で恐縮なのだが、これもマクロと関係が有るのです。被写体をカメラで
撮る際、光の束がレンズ群を通り、最終的に凸レンズによって1点に集中させら
れます。その後、光はその点から広がりを見せ、ある特定の焦点が合った距離に
左右上下逆になって実像を結びます。この点から焦点までの距離が焦点距離です。
標準レンズと呼ばれる物は、この焦点であるフィルム画面の対角線の長さの事を
言い、銀塩の35mmフィルムであれば対角線43mmがこれに当たります。但
し、通常は50mmを一般的に標準レンズとしています。
デジタルカメラもまったく同じ原理なのですが、かなり特異な形態になっていま
す。それは、フィルムにあたる受光素子「CCD」が非常に小さく、対角線の長
さ、つまりは標準の焦点距離が4mmとか7mmと行った具合に極端に短くなっ
ているからです。焦点距離が短いと言うのはマクロ撮影に向いており、このよう
な事からデジタルカメラは「マクロに強いカメラである」と言われる所以です。
よってデジタルカメラには標準で「マクロモード」が備わっており、機種によっ
ては被写体まで1〜2センチと言った脅威的な接写が可能で、オートフォーカス
までも追従してくれます。
とは言え、極端にマクロに強いデジタルカメラも結構有りますが、今回質問箱に
投稿頂いたAさんの場合は、強力なマクロ機能を備えていないタイプのデジタル
カメラを使った際に起こった撮影のトラブルです。


    
    
    
    
    
    
    
    
    
    

マクロモードボタン
これはオリンパスの物。デジタルカメラにはマクロモードが標準で装備されており、ボタンを押してモードを切り替えるタイプと、シームレスにマクロ撮影が出来るタイプがある。





標準的なマクロモードは被写体までの最短距離が10〜30センチ程度です。私
の使っているオリンパスのC2000Zoomは30センチまでしか近寄れませ
ん(但し3倍ズームとの併用で実際は10センチまで寄ったのと同等になります
のでマクロ撮影の意味では結構小さな物も大きく写せます)。ご自分の所有する
デジタルカメラがどれだけ被写体に近寄れるかをまずご確認ください。カタログ
や取り扱い説明所に明記されています。
それと、マクロ撮影をするのに「マクロモード」に切り替える必要がある機種な
のか、それとも何ら手を加えなくとも最短撮影距離まで近づくことが出来る機種
なのかも確認してください。だいたいの機種は「マクロモードボタン」があり、
それを押して撮影モードを切り替える仕組みになります。カメラのマクロモード
を選択しても外見の変化は無く、液晶パネルなどにマクロモードである表示が点
灯します。カメラ内部ではレンズのバランスが変わり、近寄って撮影出来る体勢
が整います。


    
    
    
    
    
    
    
    

「チューリップマーク」がマクロモード
「マクロモード」に切り替えても外見上の変化はありません。そこで、デジタルカメラの液晶部などにはマクロモードになるとその旨が表示されます。写真はオリンパスの物。




さあ撮影です。
今回の様な「指輪」を撮ると言うことは、かなり被写体に近づく必要が有ります。
指輪ですとだいたい3センチ位まで近寄りたいものです。但し、先程も述べまし
たが使用するデジタルカメラにも最短撮影距離がまちまちです。Aさんが行った
撮影では、周囲にピントが合い、肝心の被写体(指輪)がボケボケになってしま
ったというのです。これは「近づきすぎ」が原因。
近くに寄りすぎたため、カメラがピントを合わせられず、後ろにピントが抜けて
しまいました。これを回避するには最短撮影距離を守り、被写体からの距離を開
けて撮影すればピントを指輪に合わせることが可能です。ズームレンズ付きのデ
ジタルカメラの場合は、ちょっと離れたところから望遠側で撮影すると、より被
写体を画面に大きく撮影する事が出来ます。
とは言え、Aさんは「指輪」をメインに撮影したいのであって、指輪を出来るだ
け画面一杯に写したかったのです。指輪はたいへん小さいので、これを画面に大
写しにするにはちょっとしたコツが必要です。デジタルカメラのスペック通りに
撮影していたのではとても思ったようには行きません。それを可能にするにはデ
ジタルカメラだけでは出来ません。秘密の「小物」を使って被写体に接写します。


    
    
    
    
    
    
    
    

工業用のルーペ



写真用のルーペ(10倍率)
取っ手の付いた一般的なルーペの他、上記写真にある工業用・写真用のルーペも使える。この場合レンズの大きいデジタルカメラには向かないが、小型の点と拡大率の点では普通のルーペよりも有利だ。



その「小物」とは、、「ルーペ」です。
ルーペとは小さな新聞の文字を拡大して読む事の出来る凸レンズの事です。子供
の虫眼鏡でも良いですし、写真で使うフィルムチェック用の物でもかまいません。
とにかく物を拡大して見ることの出来るレンズを用意します。手持ちにその様な
物が無ければ文房具屋でルーペを手に入れてみてください。写真屋さんにも置い
ていますよ。1つ1000円前後で購入できます。
このルーペをデジタルカメラのレンズ部分に密着して固定します。固定と言って
も手でしっかり押さえるだけでも良いし、セロハンテープで動かないように取り
付けてもかまいません。ここでポイントは「密着」させる事。ちょっとくらい放
れたりガタガタしてても一応接写は出来ますが、しっかりした写真を望むのなら
ルーペの中心と、レンズの中心を合わせて密着させるのがコツです。もう1つポ
イントは大きすぎず小さすぎないルーペだったらなおベスト。カメラのレンズよ
りもルーペのレンズの方が小さいと周囲がケラレる(黒っぽくなる)場合もあり
ます。大き過ぎると持つのが大変だったりします。

さて!「ルーペ付きデジタルカメラ」で指輪などの小物を撮ってみましょう。
カメラはマクロモードにしてもしなくてもかまいません。とにかく近づいて撮る
のが命ならマクロモードにセットします。ピントの合う範囲が大変シャープにな
りますから、カメラをしっかり構えてください。三脚に固定するのも良いですが、
微妙な前後左右の調整は手持ちの方が有利です。
ここでもワンポイント。
最近はカメラに絞りを手動で設定できるデジタルカメラも増えてきました。そこ
で、指輪の場合はリング全体(奥行きまで)をシャープに撮りたい場合は絞りを
絞ります。F値になっているのでF8〜F11まで絞ってください。反対に、リ
ングの先端部分だけシャープに、リング奥行き部分はボカしたい場合は絞りを開
放値(F2〜F4)にセットします。
絞りを開放にした方が手ブレも抑えられ、背景もボケて美しく見えますが、商品
としてリングすべてのデザインを鮮明に描写する必要があれば絞りを絞ります。
フラッシュはカメラによって良し悪しがあり、「影」を作る原因にもなるので、
出来るだけフラッシュを使わず、照明を明るく当てるように心がけます。


参考実験レポート
手持ちの「ルーペ」でマクロ撮影
QV−10A接写術大実験!


どうです?ちょっとしたマクロ撮影ならばこの方法で思った以上の撮影が出来ま
す。しかし、もっと本格的に、画質的にも最良のプロフェッショナルな方法でマ
クロ撮影を行いたいのであればマクロコンバーターやクローズアップレンズと言
った機器を使います。更にリングストロボを使えばこの上ありません。
今回はそこまで触れずに簡易な裏ワザの「ルーペ」のみにしておきます。本格的
な事はデジタルカメラ研究マガジン(http://digicame.com/)に掲載してありま
すので、そちらをご覧頂くとして結ばせてもらいます。



銀塩カメラ用のクローズアップレンズ

参考実験レポート
各種マクロレンズの利用レポート「どこまで接写出来るかな?」編



デジタルカメラに関する質問は、
http://digicame.com/
で随時募集しています。


    
    


99/11/17
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