デジタルカメラ豆知識


「デジタルカメラって何じゃらほい?」


ここに書いたものはメルマガ「デジタルカメラ研究ネットワーク」に掲載したものを再編集してアップしました



質問】……………………………………………………

デジタルカメラって、そもそも何ですか?


    


【回答】……………………………………………………



正確には、
ムービーを撮る機器が「デジタルビデオカメラ」で、
静止画を撮る機器が「デジタルスチルカメラ」です。
「デジタルカメラ」「デジカメ」と総称して呼ばれているのは「デジタルスチル
カメラ」の方です。デジタルビデオカメラも略せば同じデジカメですが、暗黙の
了解で「デジタルカメラ」「デジカメ」は「デジタルスチルカメラ」を指すこと
になります。「デジカム」「DV」ならば「デジタルビデオカメラ」を指します。
最近ではデジタルスチルカメラにも動画機能が追加されて来たのでビデオカメラ
っぽくはなりましたが、静止画を撮るのと動画を撮るのでは少々違う構造を持っ
ています。

と、書いたとしてそれで回答とは言えませんね。
そもそも、「デジタル」な「カメラ」とはどういうことなのか?
説明していきましょう。

一般的な、フィルムに写し込み印画紙に画像焼き付ける写真技術を銀塩カメラと
称して話を進めます。
デジタルカメラも銀塩カメラも写真原理は同じです。
まず暗箱があり、そこに穴を開け、レンズを取り付け、シャッター幕を取り付け、
絞り装置を取り付けるとカメラの基本的な構造になります。レンズを通った光の
束は暗箱の穴を通り暗箱の中で焦点が結ばれた平面に像を結びます。ここにフィ
ルムを置いたのが銀塩カメラで、受光素子を置いたのがデジタルカメラです。

銀塩カメラのフィルムは光に反応する化学物質(感光成分)をポリエステルフィ
ルムに塗った物です。感光成分はゼラチンと銀化塩で出来ていて、光が当たると
銀化塩が化学変化を起こし、フィルムに画像を写します。

デジタルカメラの受光素子にはいくつかの種類が有ります。
まずはデジタルカメラの9割以上の機種で採用されているのが「CCD(電荷集
合素子)」です。CCDはフォトダイオードの集合体。平面上に縦横格子状で整
然と並べられ、その数は画素数と同じ数、つまり250万画素のCCDはそれだ
けの数のフォトダイオードで出来ているのです。凄い技術ですね。
原理は1個の受光部のフォトダイオードに入射した光を電子に変換し、積分して
貯めておきます。これを250万個のフォトダイオードがあるCCDならその数
分のフォトダイオードの電子の量を順次出力して1つの画像を作り上げます。電
子のレベルで情報を行き来するから出来るものの、何百万個もの画素1つ1つを
読み取り、画像にして行くなんて事は技術の進歩があったからこそ出来たこと。
最近は高速化も追求され、動画への対応や、撮った画像をバッファに貯えておく
「連写」も可能にしています。
但し、ダイナミックレンジがこの電子の量によって決まるため、最近流行りの
1/2インチに200万画素以上の密度を集積するやり方では、どんどん表現力
が失われていってしまいます。小型化も1つの技術革新ですが、表現力を増やす
手段としてはマイナスで、最も良い進化としては同じ画素数ならばCCDのサイ
ズを大きくして1つの画素におけるダイナミックレンジの容量を増やしてあげる
事です。デジタルカメラの画像を評価する時に言われる「明るい部分が白く飛ぶ
」「暗い部分が黒くつぶれる」と言った明暗差は新しいデジタルカメラが出てき
ても改善されていないのはこの為です。ま、これも「デジタルカメラの特徴」と
言うのでしょうか、、。
よって、明るい空と、深い木々を同じ構図の中に入れて撮った場合、空に露出を
振ると木々は黒のベタ塗りに、反対に木々に露出を振ると空が白飛びするデジタ
ルカメラ特有の画像表現になってしまっています。

次に受光素子の仲間には「CMOS」が有ります。
CMOSイメージセンサーはMOSトランジスターで出来ています。メリットが
大量生産、低コスト、低消費電力であるた為、とにかく安くて小型軽量を目的と
しているデジタルカメラに採用されています。トミーのミーシャ(6980円)
や、高木産業のデジタルカメラ(9800円)などがCMOSイメージセンサー
を使っています。デメリットは画素数の少なさにあり、汎用品で320x220
ピクセル程度しかないので、高解像度・高画質傾向に進むデジタルカメラ事情に
は適合しません。
とは言え、CMOSを採用し、液晶モニターを省く事で消費電力がかなり抑えら
れるので、単4電池2本でCCD搭載機では信じられないほど長時間駆動が可能
な点は最高のメリットです。
パーソナルなデジタルカメラ登場初期の頃からこの2つの素子は使われていまし
た。

受光素子として3つ目が「人工網膜チップ」です。
この素子は1/1000秒以下のスピードで高速に画像を検出し、画像処理機能
(エッジ検出・射影検出)を備えるるデバイスです。これまでモノクロのみだっ
たのが、カラー化しました。基盤に直付け出来るのがメリットで、超小型化が必
要な機器に利用されようとしています。例えば携帯電話に取り付けて画像を送り
ながら話が出来る技術に使われるようです。また、ゲームボーイのカメラは人工
網膜チップを使っています。デジタルカメラとしては特異な方向に使われている
ので私もあんまり良く分かりません。


このように、フィルムと受光素子が1つ目のキーワードになっています。

銀塩カメラとデジタルカメラの違いは「画素」と言う概念です。銀塩カメラはフ
ィルムに粒子の形で記録されます。無数の粒子が画像を表現しているのに対し、
デジタルカメラは有限個数の画素によって画像を表現しています。出来上がった
両者の画像を見比べた際、一見すると同じに見えても、銀塩カメラは粒子の集合
体、デジタルカメラは画素の集合体になっています。
デジタルカメラの画像をパソコンで拡大すると、最終的には四角い画素に行き付
きます。銀塩カメラはどうか?印画紙を拡大するならば粒子ですが、もしもスキ
ャナーでパソコンで取り込んだのであれば「四角い画素」になっています。ここ
がややこしいのですが、パソコンで見るならばどちらもデジタルフォトとなりま
す。

大きな違いは銀塩カメラの場合、例えば斜めの直線を拡大しても限りなく直線で
あるのに対し、デジタルフォトはギザギザの階段状に表現されます。画素数が多
くなればなる程、見た目にはわかりにくくなりますが、デジタルカメラの受光素
子が格子状に並んでいるので、どうしても最終的には完全な斜めの直線を表現す
ることができません。デジタルカメラが文字の撮影に弱いのはこの為です。銀塩
カメラの場合、フォーカスさえしっかりセットしておけば、雑誌のページも細か
な文字まで読むことができるのに対し、デジタルカメラは文字がギザギザしてと
ても読むのに堪えがたい画像になってしまいます。



銀塩カメラとデジタルカメラの違いの1つにフィルムと受光素子があることまで
書きました。銀塩カメラが銀化塩を塗ったフィルムに画像を記録するのに対し、
デジタルカメラは受光素子を使います。
ここで間違いやすいのは、銀塩カメラがフィルムに画像を記録したのと同様にデ
ジタルカメラの受光素子が画像を記録していると思ってしまいがちです。受光素
子というのは、光を受けてその強弱をアナログ的に示すのみであって、実際画像
を記録する媒体は「メモリー」なのです。と言うことは、銀塩カメラは1回撮影
するとそのフィルム部分に画像が記録され、新たに撮影するときはフィルムを巻
き上げて使いますが、デジタルカメラは何度も繰り返し受光素子を使えるため、
「巻き上げる」動作は不要です。巻き上げる代わりにメモリーの空きスペースに
順次新しい画像を記録し続け、メモリーが一杯になった時点で撮影が出来なくな
る、つまりはフィルムが無くなったのと同じ事になります。そうなった時は新た
にメモリーを入れ替えて装填する、これもフィルムを入れ替えて使うのと同じ感
覚で利用します。

撮った写真を見る事についてはどうでしょう。銀塩カメラはフィルムに記録した
画像を現像後、通常は印画紙に焼きつけ、人が視覚的に見れるようになります。
デジタルカメラの場合は受光素子で受けたアナログの画像データをデジタルに変
換し、そのデジタルデータを今度はプロセッサで膨大な計算をしながら「色」情
報に変換、それらすべてを組み合わせて1つの画像としてまとめ上げます。それ
をメモリーに書き出し記録した物がデジタル画像のデータとなります。まだこの
段階では単なる2進数のデータであって人間が見ることはできません。そこで、
パソコン等を使いソフトでモニター上に画像を展開し、はじめて人間が視覚的に
見ることが可能になります。
大変複雑な工程と処理を行っている為、銀塩カメラに比べるととても技術的進歩
が無ければ出来なかった「カメラ」であることがお分かりいただけるでしょう。
しかしながら、このような複雑な処理はすべて電子機器内部によって行われるた
め、ユーザーサイドから見れば銀塩カメラで言う「現像処理」をする必要がなく
フィルム管理から開放され、撮影後のプリントサービスを受けるまで撮った画像
を見ることが出来ない時間的な制約からも開放されるメリットを持ったカメラで
もあります。

反面、特徴でありデメリットでもあるいくつかの問題も生じています。まず、電
池が無いと動きません。銀塩マニュアルカメラの場合、ごく小さなリチウム電池
をカメラに装填しておけば、2年間位は露出計の針を動かすことが出来ます。露
出計が動けばシャッタースピードをセットし、カメラレンズ部の絞りを設定、フ
ォーカスを手動で調整することで、機械的なシャッター幕を作動させ写真を撮る
ことが可能です。もちろん電池なしでも使い捨てカメラや、露出計を使わないマ
ニュアル操作と言った具合に撮影は可能です。
ところがデジタルカメラは電池が命。電池が無ければウンともスン言いません。
しかも、液晶モニターを標準装備し、大画像を高速に処理するには大電流が必要
です。アルカリ乾電池を4本使うデジタルカメラでさえ1時間ちょっと程度の連
続駆動能力しかありません。ミーシャのような特殊なデジタルカメラは液晶モニ
ターを省き、性能を限りなく落とすことで連続2週間も持つようですが、それで
も電池あってのことで、電池が切れれば何も出来ません。
但し、デジタルカメラはビデオカメラと違って、撮影する時に1〜数ショット分
だけ電源スイッチを入れる使い方の為、ひどく電池が消耗して困ってしまうと言
った状態は通常利用であれば起りません。ビデオカメラならば数分〜1時間を超
えて電源を入れ、電源を入れている時間こそが撮影の時間でありますのでその辺
は違っています。デジタルカメラを使う際に木目細かな電源管理を撮影者である
人間が行えば1日中使っていても電池が空になることは少ないです。もしも何か
集中して撮影したりする場合は、予備の電池を持っていれば安心して使えます。

さて電気が必需品なデジタルカメラも、実は電気が厄介物になって困ってしまう
時があります。それが「静電気」。静電気とは、冬になって空気が乾燥しはじめ
ると衣類やドアの取っ手などに発生するあの「バチッ!」って来る電気のことで
す。デジタルカメラはこの静電気に非常に弱い。特にフィルムにあたる「メモリ
ー」に悪影響を及ぼします。
銀塩カメラの場合、撮影したフィルムに光や放射線が当たることを嫌いますが、
デジタルカメラの場合は撮影データが入っている「メモリー」に光がいくら当た
っていようと問題なく、「暗室作業」の概念がありません。
デジタルカメラの場合は「フィルム」の代わりに「メモリー」を使います。この
メモリーは半導体チップで出来ており、デジタルカメラによっていくつかの形状
が存在します。なかでもスマートメディアと呼ばれるメモリーはとりわけ静電気
に弱く、これはデータの通り道である「接点」が表面にむき出しでレイアウトさ
れているからです。電気知識に詳しい人ほど「恐い」メモリーであって、セータ
ーを着て帯電した状態でこのメモリーの接点に触れると、運悪く静電気が走った
場合、メモリー内部のチップが破壊されます。外見は何でもなくても、中の半導
体はダメージを受けてしまい、せっかく撮った画像がパーになるだけでなく、高
価なメモリー自体が2度と使えない状態になってしまいます。
「まさかの静電気」によりメモリーを使えなくしてしまった例はかなりあるので
銀塩カメラが暗室で「光」を遮るのと同様にデジタルカメラのメモリーを扱う際
は「静電気」に注意して行く必要があります。


「デジタルカメラって何?」その結論は、カメラの基本原理はそのままに、受光
素子から先の処理をすべて電子化したカメラである、簡単に言ってしまえばそん
な感じになると思います。

余談ですが、「デジタル」の反対は「アナログ」であって、それじゃ銀塩は「ア
ナログカメラ」なのかな?って思ったことありませんか。これ間違い。「アナロ
グカメラ」はFM変調方式で磁気テープ(磁気ディスク)に書き込むカメラのこ
とだと物の本には書いてあります。


デジタルカメラに関する質問は、
http://digicame.com/
で随時募集しています。



    
    
    
    
    


99/12/18
デジタルカメラ大実験へ