C1400L活用術

「デジタルカメラにおける光学フィルターの活用」
減光(ND)フィルターの応用編


これまでにステップアップリングを使えば汎用品の銀塩カメラ用光学フィルターコンバージョンレンズ類をデジタルカメラに装着が可能と言う事を述べてきました。
またステップアップリング自体も一眼レフ型であるC1400シリーズ以外でも工夫をする事によって装着が可能であって、フィルター装着をした機種のレポートもいくつかアップされています。

そもそもデジタルカメラは受光素子CCDが捕らえた画像を液晶画面にリアルタイムで表示する仕組みになっているため、一種の一眼レフ型と言えるので、この点は最大のメリットですね。
しかし液晶画面のクオリティーはと言うとそれ程高いわけではなく、微妙な色あいや反射光の具合、ピントの山にいたっては光学式ファインダーにはとても及びませんが、フィルターは色相の変化を施す物だけではないことを含めここでは紹介していきます。

「カメラをマニュアル操作出来る減光(ND)フィルター」



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S1/62; F2.8
通常撮影


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S1/9; F2.8
減光フィルター(ND8)使用

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S1/10; F2.8
減光フィルター(ND8)を左2/3に使用
パソコンでレタッチソフトを使った事のある人ならフィルターと言うとエンボス処理とか輪郭強調とかボカシとかを思い出す事でしょう。
カメラでの光学フィルターでもそれらの一部の効果を出す事は可能で、例えばボカシやゆがみを持たせる事にも利用されます。
もちろんこれらもフィルター効果のひとつではありますが、もっと違った、パソコンでは不可能な利用方法が沢山有りますので紹介して行きましょう。

そのひとつに減光フィルターNDフィルターとも言います)が有ります。
これはネズミ色をしたフィルターで読んで字の如く光の量を減らす効果を持ったフィルターです。

「それじゃ昼間の風景を夕方や夜のように暗くするの?」

その答えは
「まったく違います」

サングラスのようなこの減光フィルターをデジタルカメラに取り付けて撮影したらどんな風になるのか。
なんだか暗い画像になると思ってしまいますが、ビックリしますよ、何ら画像の明るさや色相には変化は有りません
これが減光フィルターの最大の特徴です。


左の画像はC1400Lで撮影しました

一番上が蛍光燈の下で普通に撮影したものです。

真ん中のは減光フィルターにND8と言う光の量を−3.0EVも減少させるフィルターを取り付けたものですが、画像の明るさと色彩には何ら影響がないことが見て取れるでしょう。
シャッタースピードはスローにその分なっています。

一番下は減光フィルターをレンズ前にわざとかざして撮影してみました。フィルターの影響でシャッタースピードがスローになっているので、フィルターのかかっていない部分は白飛びしているのが分かるでしょう。


「どうして変化しないの?じゃ、どうしてそんな物くっつけるの?」

マニュアルカメラに減光フィルターを取り付けて、まったく何も露出値をいじらず撮影すると暗い画像になりますが、デジタルカメラの場合、ほとんどの物が完全フルオート露出計算(AE)機能が備わっています。
今回はこの頭の良い自動露出計をうまく使った応用なのですが、その前に露出の意味から見ていかなければなりません。

自動露出機能、これはある意味では便利なのですが、撮影者か意図するようなテクニックを秘める撮影がまったく出来ません。
銀塩カメラでよく言われるように、フルオートのカメラは失敗撮影こそ少なくなるが、誰が撮っても同じにしか写らないので個性の無い写真にしかならないと言う事です。

「デジタルカメラには露出(AE)補正と言う機能があるでしょ?」

と言われる方もありますが、これは単に今撮影した(しようとしている)画像にプラス補正をすると明るくなり、マイナス補正をすると暗くなると言う事であって、露出補正は明るさ暗さの補正機能そのものです。
カメラを好きになれない人の最大の難関は「露出」の計算が嫌いで、かく言う私も小さい頃に父親のカメラのレンズに刻まれている2、2.8、4、5.6と言った数値や8、15、30、60、125、250と言った数値が何を意味するのか見当も付きませんでした。
実はこれが露出値を決める「絞り」と「シャッタースピード」だったのです。
この露出と言う一線を超えたとき、カメラの本当の面白さが分かってくるのです。なので今有るほとんどのデジタルカメラは露出の面白さを知る人たちにとってはちっとも面白味の無いカメラなんです。
で、どうしてフィルターの話から露出の話にそれたかと言うと、先程のデジタルカメラの露出(AE)補正はシャッタースピードのみをワンステップずつ変化させる露出補正なので、画像が明るくなるか暗くなるかしか出来ません。
なのでいわば「絞り優先AE補正」となりますが、その絞り値自体が固定あるいはカメラが自動で判断したものであって任意の値にシフトする事は多くのデジタルカメラで現状不可能なのです。もし画像の明るさを同じに保つのならシャッタースピードをプラス補正した場合、絞りをワンステップ開いてやらねばなりません。
ところがデジタルカメラには絞りの設定値が1つ、あるいは2つしかなく、この様な芸当が出来ないのが困り物。

そこで登場するのが減光(ND)フィルターだったのです。

このフィルターをデジタルカメラに装着するとカメラの受光素子に届く光の量が減ってしまいます。その為、カメラ内部のコンピューターが露出値の判断を自動で行う際に、
「暗いのでシャッタースピードを遅くしよう」
と判断するわけです。
シャッタースピードが遅くなったと言う事は、デジタルカメラの受光素子に当たる光の時間が長くなり、結果フィルターを付ける前と同じ明るさの画像を撮影する事が出来るという仕組み。

ちょっと難しいかもしれませんが、この理屈を理解すると応用範囲が広がっていきます。

それではその減光フィルターを使った際の特徴を生かしてどんな撮影が可能になるのか?

例えば「噴水の水」を撮ろうとします。普通に撮影したものを基準にすると、デジタルカメラの露出補正を目一杯プラスに補正したとします。
この場合シャッタースピードが遅くなって滝の水の流れが1本のスジの様になり幻想的に撮れる反面、絞り値が同じなので受光素子に当たる光の時間が長くなり、画像が明るく飛んだようになってしまいます。
(光量によっては絞り値が動く場合も有るので理論的な話です)

減光フィルターを取り付けた場合、デジタルカメラの露出補正をしたのと同じようにシャッタースピードが遅くなりますが、フィルターで光を弱められているからであって、フィルター無しの画像と同じ明るさで撮れながら滝の水の流れに変化を付けられると言う効果が生まれます。


右の例は余り良い例ではないので、参考程度に見て欲しいのですが、上側が通常撮影時でシャッタースピード1/96になっています。
下側は−0.5EV減光するフィルターを付けた物でシャッタースピードは1/66です。
下側の方がシャッタースピードがちょっと遅くなった分、水の流れがスジ状になりかけています。
もっと減光してやると目にみえた効果が出てきます。


S1/96; F2.8


S1/66; F2.8



F7.8
NDフィルター無し
3倍ズーム(110mm)


F3.9
NDフィルター使用
3倍ズーム(110mm)
更に応用するとオリンパスのC1400Lの絞り値はF2.8とF5.6の2つが有り、露出差で言うと+−2.0(EV)の違いになります。
なのでND4と言う−2.0EV光量を減らす減光フィルターを取り付けると、デジタルカメラの絞り羽をシフトさせる事が理論上は可能になります。
どういう事かと言うと、例えば明るい屋外で普通に撮影した場合F5.6の絞り値になっていたとします。これにND4もしくはND8のフィルターを取り付けると、明るさはそのままに絞り値をF2.8にシフトが出来、これによってボケの効果を発揮させる事が可能にります。


過去に行った左の実験画像を見てください

いずれもC1400Lで撮影したもので、3倍ズーム(110mm)での撮影です。ズームをすると絞り値が変化しますので、F3.9とF7.8になっています。

明るい太陽の下での撮影ですから普通に撮影すると上側の写真の様に絞りが絞られるため、後ろのオートバイがある程度はっきり見えてしまいます。

これに減光(ND)フィルターを取り付けると絞りが開放値になりますので(シフトした)オートバイから遠景にかけてかなりのボケ味が出ているのが見て取れるでしょう。

これが「絞りの効果」です。

背景がボケていた方が手前のトマトジュースの缶を浮き上がらせる感じになります。

もっと詳しく知りたい人は過去のレポートを見てください。
と、今回は露出の話にまで踏み込んで書きましたので少々難しかったかも知れませんね。フィルターはまだまだその種類がたくさん有りますから、順を追ってデジタルカメラでの活用法を説明していきます。お楽しみに。

99/01/16